株式交付〜自社株式対価M&A
1.はじめに
今回は、令和3年度の税制大綱の中で、M &A担当者や金融機関からの問合せが多い、自社株式対価M&Aについて、税理士としてご説明します。
大綱段階のため、ざっくりした内容になることをご了承ください。
自社株式対価M&Aについて、ざっくりいうと、M&Aの際に、買収会社の自社株式を対価として、買収対象会社の株主から買収対象会社の株式を取得した場合には、買収対象会社の株主の株式売却益に対する課税を繰延ることができます。
課税の繰延とは、入り口(買収対象会社株式の売却の際)では税金はかからないけど、出口(買収会社の株式の売却の際)で税金が課税されるということです。
2.背景
日本では欧米と違い、自社株式を対価としたM&Aが行われていない状況です。
理由は、下記の通りです。
①株式交換
・100%親子関係を構築する必要がある。
・原則、株式交換親会社及び株式交換子会社で株主総会にて特別決議が必要
②現物出資
・裁判書が選任した検査役の調査が必要なため、時間とコストがかかる。
・有利発行に該当した場合に株主総会の特別決議が必要。
③産業競争力強化法の特例
特別事業再編計画の認定が必要。
3.株式交付制度の創設
そこで、令和2年度会社法改正により株式交付制度が創設されました。
税制ついても令和3年度税制大綱にて創設されることになります。
確定していませんが、施行日は令和3年3月1日と予想します。
4.メリット
①株式売却益の課税の繰延
②部分的買収が可能(新たに50%超の支配関係を有すること。100%買収の必要なし。)
③現金がなくても、大型もM &Aを実行できる。
④株式の集約化。
⑤事前の申請は必要ない。
⑥買収対象会社にて株主総会の特別決議不要
5.適用要件
①対価の80%以上が買収会社の株式(20%は現金でもオッケー。だだし、対価の現金部分に関しては、売却益が課税される)。
②新たに子会社化すること(既に50%超を保有している場合や新たに50%以下の取得については適用できない)。
③買収会社及び買収対象会社は株式会社であること。また外国法人は適用対象外。
④買収会社の確定申告書に一定の明細書等を添付。
6.買収対象会社株式の取得価額
大綱に記載されておりませんので、あくまで予想です。
おそらく下記になるのでは・・・
①買収対象会社の株主が50人未満の場合
買収対象会社の株主の帳簿価額。
②買収対象会社の株主が50人以上の場合
買収対象会社の簿価純資産価額
②の場合は、均等割が増加しそうですね。
7.終わりに
自社株式対価M&Aのメリットは、株式売却益の課税の繰延と部分的買収ができることです。
ただし、外国会社の買収や既存子会社の株式の追加取得はできませんのでご留意ください。