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《番外編》株式対価M&A

《番外編》株式対価M&A


1.結論
令和3年税制大綱により、株式対価M&A促進のための制度が創設されました。
今後は、会社法の株式交付を利用し、買収対象会社の株主の株式譲渡損益を繰延べ、タイムリーなM&Aの実現が可能となります。

2.背景
日本では、自社株式を対価としたTOBが利用されていない状況でした。
理由は、会社法上の現物出資規制(原則裁判所から任命された検査役の調査が必要)や有利発行時の規制(株主総会の特別決議)が必要となっておりました。
諸外国のように自社株式対価M&Aを促進するために、令和1年会社法改正により株式交付制度が創設されました(施行日は令和3年3月31日)。現状、会社法の株式交付を実行した場合、買収対象会社の株主に課税が生じてしまうことから、今般税制改正が行われました。

3.内容
会社法の株式交付を利用することにより買収対象会社の株主は、買収会社に買収対象会社株式を譲渡し、その対価として買収会社の株式を取得します。
この場合、原則は、買収対象会社の株主は株式譲渡損益を認識する必要がありますが、株式対価M&A税制を適用することにより、株式の譲渡損益の課税が繰延ベます。

4.適用要件
①対価の80%以上が買収会社株式であること。
②新たに50%超の支配関係となるM&A
であること(既に50%超の支配関係を有する法人の株式の買い増しには使えない)。
③ 買収対象会社は株式会社であること。
④確定申告書に一定の書類を添付すること。

5.株式対価M&Aのメリット
①キャッシュが少ない会社もM&Aを実行できる。
②買収対価の20%以下は現金でもオケ
③部分的買収が可能(会社法株式交換は100%親子会関係を構築するスキームのため、株式対価M&Aの様に50%超〜99%支配関係の構築はできない)
④中小企業の事業承継にも活用できる。

6.留意点
・現状、税務上の適用時期は不明。
・外国会社は買収会社又は買収対象会社になれない。